どうして福祉に力を入れているのか?批判を承知でお伝えすると、最初のきっかけは安く人材を使えると思ったことでした。障がい者の就労を支援する就労支援事業に参画すれば、国からの助成金が支給されるためです。しかし、それは間違いだとすぐに気付きました。私たちは障がい者と共に仕事をすることの難しさをまざまざと思い知らされました。最初は手探り状態で、
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「どのような仕事を提供すべきなのか?」
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「そもそもどのように接するべきなのか?」
様々なことで悩みました。それと同時に、触れなければ芽生えない感情も生まれました。ある日、障がい者の一人が私にこう言いました。
『仕事たのしい、ありがとう』
私は目頭が熱くなったことを今でも覚えています。「こんな欲深い自分に感謝してくれる」、そんな気持ちと純粋にうれしい気持ちとが入り混じって、感情が大きく揺れ動きました。以来、彼らには活躍できる場所が必要だと、強く思うようになりました。
そんな中、彼らと一緒に仕事をする中で、あることに気付きました。それは、彼らには私たち「健常者」と呼ばれる人間には持ち合わせていない能力があることです。例えば、障がいによって数を数えることはできないけれど、少しの粗も見逃さない検品力をもっている方がいます。その人は数字の一から十までを数えることができません。私達から見たらそれは普通のことではないでしょう。
このようにハンデを抱えていることも事実ですが、私たちでも気づかないような粗を見つけてお客様を満足させていることも事実なのです。私たちはそんなハンデを抱えている人たちでも、その人にしかない能力が最大限に活かせるような環境を用意することを考えるようになりました。
「立場が逆転する場所を作る」という考え方に変え、支援する側が、支援される側になる条件、あるいは立場が同等になる条件ってどんなの?ということを考え・大事にするようにした結果、私たちの内職では彼らの優れた部分がフルに活かされるようになりました。チームの弱い部分を優れた能力で補って、優れた部分をさらに尖らせるようにしています。ハンデを抱えている人たちが持つ特異な能力を活かせる環境を提供しているのです。